環 境 活 動 報 告

2017/5/5
脱原発に向け目指すべき再生可能エネルギー

一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

リ協定が、昨年11月に94の国・地域の締結により発効されて約5ヶ月が経過しました。トランプ大統領の登場により、中国に次いで温室効果ガス排出量の多い米国がまさかの脱退を表明しています。
地球温暖化対策「脱炭素社会」に向け舵を切った世界の動きに水を差すまさに信じられない決断です。
そのことの是非は今回述べることは控え、国際社会とともに日本としてパリ協定にどのように取り組んでいくか、原子力発電をあてにして進めてきた国・企業の戦略が大きく見直される中、脱原発に向け目指すべき再生可能エネルギーについて述べてみたいと思います。

1)パリ協定に対応する日本の動き

今回のパリ協定の動きに対し出遅れていたのが日本です。世界はすでにCO排出を減らしながら成長する時代に入っておりその後押しをする仕組みがパリ協定ですが、日本政府や産業界は温暖化対策により経済成長が阻害されるという意識が強いようです。協定によって、世界はCOの排出には費用がかかり、削減の取り組みは新たなビジネスチャンスだと考えるようになり、新規市場の先行者利益は大きくその方向へのシフトを模索し始めています。
日本は、別の方向に向かっているように思います。石炭火力発電所の新増設計画は40基以上に及び、そのまま稼働すれば日本のCO排出量は今より2~3%増加します。原発事故の埋め合わせを再生可能エネルギーより石炭に求め、コスト優先にて進んでいることは憂慮すべき事です。
欧州連合(EU)や米国の州、韓国などは排出量取引制度や炭素税を導入し、COの排出を大幅に減らす仕組みの導入の中で技術革新が生まれると考えているのです。一方、鉄鋼や電力等COを大量に排出する企業が発言力を持つ日本の経団連は導入に反対、政府もそうした声にひきずられ導入に後ろ向きです。
パリ協定は、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しています。しかし各国の削減目標はまだ不足しており、2030年にあと25%の削減が必要であると指摘されています。
欧州連合(EU)は2011年に「2050年に90年比80~95%削減」する低炭素経済ロードマップ2050を発表、電力のほとんどを再生可能エネルギーで賄うとしています。フランスは昨年、国全体の排出量に上限を設け、段階的に削減する仕組みを作りました。
一方、日本は経済産業省と環境省がそれぞれ長期戦略を作るための検討を始め、閣議決定した「50年に80%削減」の目標を実現するための具体策を示したところです。環境省の会合で専門家が示した試算では、建物の断熱性向上や省エネ機器の導入で最終エネルギー消費を約40%削減し、発電電力量の90%以上を再生可能エネルギーなどで賄うことで技術的には可能としたが「社会経済構造の大転換・変革が必要」と指摘されています。経済産業省は国内での大幅削減は経済に悪影響が出ると主張、日本の省エネ技術を普及させて世界全体で削減することを提言しています。
日本の目標として、温室効果ガス排出量<CO2換算>(2013年度約14億トン:世界5位)を2030年度に2013年比26%削減、2050年度に80%削減と定めました。そのためには、①省エネ化、②CO2排出の少ないエネルギーの活用、③利用エネルギーの転換がポイントとなってきます。

2)大きく見直される国・企業の戦略

東日本大震災後、石炭火力は原発に代わる安定電源としての新設計画が相次いだが、今年になり見直されてきています。
東燃ゼネラル石油と関西電力は東京湾岸で計画していた石炭火力発電所を将来、二酸化炭素(CO)の排出規制が強まれば採算がとれないと判断し断念しました。両社は2015年東燃ゼネラル千葉工場の敷地内に石炭火力発電所を建設することで合意し、折半出資の運営会社を設立し発電能力は原発1基分に相当する100万kWで2024年の運転開始を目指し進めていました。
2016年4月から電力小売りの完全自由化が始まり、全国の原発が止まったこともあり、両社とも首都圏での電気の販売を強化する目的で、石炭火力の安い電気を入手し競争力を高める狙いでした。
だが、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が発効され日本も温室効果ガスの大幅削減を求められます。環境省はCOを大量に排出する石炭火力発電所の新設に難色を示し、排出量取引や炭素税などCO排出に費用がかかる制度の導入も目指しており石炭火力の電気が投資に見合う利益が得られるか見通せなくなったのが要因です。
環境省によると最新型の石炭火力でも、LNG火力の約2倍のCOが排出され、約40カ所が全て稼働すると政府が掲げる2030年度CO2削減目標△26%を大幅に超える事を懸念しています。世界的にも、石炭火力への逆風は強まってきており、フランスや英国、カナダは石炭火力の廃止に向けた政策を発表。先進国の金融機関には、石炭火力発電への融資撤退を決める動きもあります。
遅まきながら、一時の利益より長期にわたる環境を優先することは良い方向に向かっていると感じます。
さらに大きな出来事は、原子力事業に大きく舵をきっていた東芝が、買収した米原子炉メーカーウエスチングハウス(WH)の巨額損失により約1兆円もの赤字に陥り上場廃止・会社再生法の適用か!! まで追い込まれていることです。それだけ、世界では福島第一原発事故により原子力に対する不信・不安が広がっているということがいえます。

3)課題を継続する原子力発電所再稼働への動き

ここにきて懸念するのは、福島第一原発事故により見直されてきた原子力発電所に対する再稼働の動きです。関西電力大飯原発3・4号機(福井県)の再稼働に向けた審査で原子力規制委員会は関電の安全対策の基本方針が新規規制基準に適合すると認め審査書案を了承し、関西電力は今夏にも再稼働する動きです。
1991年運転開始の大飯3号機、93年運転の4号機はともに出力118万kWと、関西電力が再稼働を目指す9基の中で最大、安全対策工事は現時点で1220億円と見積もられるが、2基が稼働すれば火力発電の燃料費を年間1200億円削減できるとされています。
ただ、原発事故が起こってからでは取り返しのつかないリスクを抱えることは、福島第一原発の事故により明白です。関西電力が原発事故後に動かした火力発電の燃料費増に伴う2度の値上げにて顧客離れが起こり、さらに昨年自由化された家庭向け電力販売でも新規参入の大阪ガスなどに顧客を奪われ苦戦しています。関西電力の再稼働への動きは、まさに目先の利益最優先に走り過ぎているのではと感じます。

4)電力自由化に向けての動き

電力の全面自由化で、家庭でも電力会社を選べるようになり1年を迎えました。新電力の主に家庭向けの低圧での契約数は昨年までに約221万件となりさらに増え続けており、3月までに資源エネルギー庁に登録した小売り電気事業者は約390社あります。参入しているのは、ガス会社や商社など業績は様々ですが、安さを売りにした会社も少なくありません。その中で、原発による電気を使いたくないという思いの人に対し原発フリーの電気を広げようとバイオマス発電や太陽光、水力発電所による電気を売電する事業者も増えてきています。料金だけではなく、電気の種類も考えて選べるように電気構成の公表を広げていくことが重要でありもっと普及させるべきと思います。

5)脱原発に向け目指すべき再生可能エネルギー

産業界は脱炭素社会を見越し動き出しました。国連環境計画(UNEP)によると、2015年の再生可能エネルギーへの投資は過去最高の2859億ドル(約30兆円)となり、国際エネルギー機関(IEA)は、今後5年間の再生可能エネルギーの増加予測を13%上乗せしました。
我々に必要なことは、脱原発を叫ぶだけではなく、脱原発に向け何ができるかが重要です。
省エネに常に心がけ無駄なエネルギーを徹底的に削減するとともに、作り出すエネルギーとして再生可能エネルギーを最大限に増やしていくことにあります。
2015年度より公表が始まった全国10の送配電会社の電力需給実績のうち、2016年度前期について「環境エネルギー政策研究所」が分析しました。その値は全国の電力需要に占める太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーによる発電比率が、2016年度前期(4~9月)で最も高かった5月に平均で20.2%を占めており、ピーク時には46.3%、前期全体では15.7%とのことです。
再エネの発電比率が最も高かったのは5月4日正午(1時間平均値)で46.3%だった。5月の連休中は工場やオフィスの稼働が減り、気候も温暖なため例年電力需要が少なくなる時期、太陽光発電が全需要の30.1%を賄い火力発電の稼働が抑えられたためです。
このように、電力に占める再生可能エネルギーを増やしていくことは不可能な事ではなく、再エネの固定価格買い取り制度(FIT)が導入された2012年度以降増加傾向にあります。
気候変動は大きな脅威であり原子力には壊滅的なリスクがあります。持続可能な再生可能エネルギーへの移行は全ての人に必要不可欠であり、その移行により環境だけでなく雇用を生み出す大きな効果を上げていくことが出来るといえます。
小生が活動している太陽光市民共同発電所はまだまだ小さな発電所で、雇用を生み出すところまではいけていませんが、今年度4号機設置を目指し、生駒市がスタートする新電力会社にも出資し参画していく予定です。脱原発のために再生可能エネルギー拡大に向け、具体的にチャレンジしていく事が我々のなすべき姿と考えます。

以  上
*参考文献 朝日新聞掲載記事
(2017.4.20記)

 

2016/11/31
<2016環境省グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞受賞!>
全額市民出資による市民共同太陽光発電所事業

一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

小生が代表理事を務めている、「一般社団法人市民エネルギー生駒」の取り組みが、「2016環境省グッドライフアワード」において、環境大臣賞優秀賞を受賞する事が決定しました。これまでもこの欄にて少しふれた事はありますが、応募140団体中第二位に相当する優秀賞を受賞する事が出来大きな喜びでいっぱいです。
今回は、このような栄えある賞を頂く機会を記念し2013年10月設立以来これまでご支援頂いた生駒市、出資頂いた皆様に感謝すると共に、大きく評価頂いた我々の取り組みについて述べてみたいと思います。

1)取り組みの紹介
一般社団法人市民エネルギー生駒は、市民主体の再生可能エネルギーの普及促進と電力の地産地消に取り組む事を目的として、2013年10月16日に設立された団体です。運営する市民共同発電所は生駒市内に3機あり、その設備費用(3機合計5,600万円)は、金融機関等に頼ることなく全額市民出資によって集めました。メンバーは事業の主旨に賛同する市民の有志で構成し、これまで企業等の第一線で培った事業経験(スキル・ノウハウ等)を活かし、自分たちの住む地域に貢献するために精力的に活動しています。その事業収益は、小学生向けのソーラーカー工作教室や幼稚園児手作りによるペットボトルソーラーツリーを通じてのおひさまエネルギーイベント(再生可能エネルギー普及イベント)、電力自由化についての講演会開催の費用等に充てており、収益の地域還元を実現しています。とりわけ、市内の介護老人保健施設に太陽光発電設備を、新設されたこども園に園舎看板を寄付するなど市民に見える形で収益の地域還元を実現しています。
当法人の地域貢献のあり方は、セカンドキャリアを迎える市民の地域活動の一形態として行政と市民の協働の一つのモデルとして市内外からの注目を集めています。

2)活動のきっかけは?
東日本大震災での原子力発電所事故の影響を受け、再生可能エネルギーの普及促進へのニーズが生駒市内においても高まりました。自らの手でそのニーズに応えたいという市民の有志が集まり、市民共同発電所を始めました。まずは生駒市の協力を得て公共施設の屋根等を長期間借り受け、エネルギーや環境に関心のある市民の気持ちを出資として集めました。その出資金を原資に太陽光発電設備を設置し、合計3機の発電所を立ち上げました。
3)問題解決のために取り組んだ方法
他地域の多くの市民共同発電所が補助金や金融機関からの借入れ等に頼るなか、当事業は奈良県初の太陽光発電市民ファンドとして、事業費を全額市民出資で集める事が出来ました。これは、事業への理解を得るため何度も説明会を開催し、事業収益で市内の老健施設に太陽光発電設備を、こども園に園舎看板を寄付するなど、目に見える形で収益の地域還元を行う事で、行政や地域住民などの協力を得る事が出来た結果と考えています。
4)活動の特徴
①市民力の結集
補助金や金融機関に頼らず全額市民出資により市民主導で発電所を設置し、生駒市民構成比は1号機81%、2・3号機70%を占めています。
特に1号機は出来るだけ多くの生駒市民にこの活動を知ってもらうために、労力はかかりましたが一人最高2口(一口10万円)に限定し、最初の1か月は生駒市民のみの受付としました。
②セカンドキャリアが活躍
電気メーカー等の企業や団体で培った経験とノウハウを活かす。メンバーには、電気技術士、太陽光メーカー技術者、公認会計士等が含まれています。
③幅広い対象に向けた普及活動
こどもからお年寄りまで、環境意識の低い人から高い人まで幅広い対象に向けた活動を展開しています。

④地域貢献
介護老人保健施設に太陽光発電設備を、新設されたこども園に園舎看板を寄付するなど市民に見える形
で収益の地域還元を実現し収益を積極的に地域に還元すると共に、緊急避難場所に設置された発電所は
緊急災害時、市民に無償で電気を支給するようにしています。

5)プロジェクトが目指している事、今後やりたい事
日本で高齢化が着実に進みつつある今、定年後の元気な市民が積極的に地域に参加する活動が、将来的に全国の他地域のモデルになる事を目指しています。また、今後生駒市が設立を予定する地域新電力会社との連携を検討しています。市民共同発電所で発電した電力を地域新電力会社に売電する事で、エネルギーの地産地消の実現へとつなげたいという思いがあり、そのためにも発電所をさらに増やしていきたいと考えています。

(2016.11.30 記)

 

2016/7/31
代替フロン規制強化と今後の課題

一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

昨年、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)にて、2020年以降の新たな温暖化対策の枠組み「パリ協定」が採択されたのは記憶に新しいことと思います。
今年になり、5月には富山市で開催された主要7カ国(G7)環境相会合において冷蔵庫やエアコン等の冷媒に使用されている代替フロン(HFC)の規制について、年内にフロン類の生産や使用を削減してきたモントリオール議定書の枠組みで規制することで合意。さらに、「パリ協定」で定められた温室効果ガス排出削減のための「長期戦略」について、2020年の期限より「可能な限り早く」国連に提出すること等を盛り込んでいます。
今回は、オゾン層破壊からはじまり地球温暖化に大きな影響のあるフロンガスについて、これまでの動き今後の動向も踏まえ述べてみたいと思います。

(1)環境問題とフロン類の関係性
フロンは、1928年にアメリカのトーマス・ミッジリー・ジュニアによって初めて合成され、冷蔵庫の冷媒として開発されました。無毒で不燃性に加え安定した物質の上に液化しやすいという「夢の物質」とも言われました。
フロンは構造式的には、水素(H)、フッ素(F)、炭素(C)、塩素(Cl)の4つの元素の組み合わせによって、下記の3つに分類できます。

◆特定フロン・クロロフルオロカーボン(CFC)
◆指定フロン・ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
◆代替フロン・ハイドロフルオロカーボン(HFC)

ところが、オゾン層保護のためにモントリオール議定書が策定されて1987年に採択。1989年に発効し、オゾン層破壊物質といわれる特定フロンのCFCと指定フロンのHCFCの2種類の製造・販売を規制しました。
この2種類のフロンは塩素を含んでおり、塩素を有することにより極めて安定的な物質となります。それが逆に変化することなくフロンのまま大気中に浮遊する事を意味し、オゾン層破壊物質として作用するために大きな問題でした。
特定・指定フロンの代替として利用される代替フロンはオゾン層破壊効果はないものの、高い温室効果を有するため、地球温暖化に影響与えます。

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表-1 フロン対照表
*ODP:オゾン層破壊係数(CFC-11を1としたオゾン層に与える破壊効果の強さを表す値)
*GWP:地球温暖化係数(CO2を1とした場合の温暖化影響の強さを表す値)

(2)これまでのフロン対策の経過
特定フロンのCFCについては、先進国で1996年、発展途上国で2010年にそれぞれ全廃と規定され、2010年に世界で全廃されました。
残る指定フロンのHCFCに関しては、先進国で2020年、発展途上国で2030年までに廃止することが規定されています。
代替フロンのHFCは、塩素を含んでおらず有害な紫外線を遮るオゾン層を壊す特定・指定フロンの代替物質として開発された。

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(3)HFC排出増加の見込み
2000年代以降、冷凍空調機器の冷媒として用いられるフロン類について、特定・指定フロンから代替フロンへの転換が進んでおり、冷媒としての市中ストックは増加傾向にあります。
温室効果が、CO2の数百~数千倍もあるHFCは、温暖化防止のための京都議定書にて排出削減の対象になるも、代替フロンとして冷蔵庫やエアコン等に使用され、使用量増加に歯止めがかかっていません。
これまで、オゾン層破壊の効果を最優先とし、温暖化については二の次としてきたつけが回ってきています。
冷媒として密閉されたコイル、配管内等において使用する限りは問題は少ないものの、廃棄時・使用時における大気への放出が大きな問題となり地球温暖化の要因の一つとなっています。

(4)代替フロン規制に向けての動き
代替フロン規制に向けて、冒頭に述べたとおり今年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、年内の議定書改正を目指すことで一致。7月のモントリオール議定書締約国会議の臨時会合で、途上国を含む約200カ国が削減時期などを議論、10月にも締約国会議があり合意を目指す動きがあります。
国内も規制強化が進められています。環境省によると2014年のHFCの国内排出量は2005年の約3倍の3580万トン(CO2換算)となっており、政府は昨年4月フロン排出抑制法を施工し、使用中の冷凍空調機器の点検や漏洩量の報告を施設や企業などに義務付けています。
最終の報告期限は今年7月末であり、環境省はスーパーやコンビニなど約2000業者からの報告を見込んでいます。

(5)今後の課題
CO2の排出量を抑えるためには、次の3点がポイントとなります。

①代替フロンのHFCを使用しない冷媒に転換する。
②廃棄時の回収率を向上させる。
③使用中漏れを抑制する。

②③は必須のことですが、今後将来に向けては①の代替フロンを使わないノンフロン機器の導入を積極的に進めていくことが重要となります。ただ、現行の代替機器の2倍程度の費用がかかること等が導入の障
害となっています。
すでに、イオンやローソンは新規店舗で自然冷媒の冷凍冷蔵機器の導入を進めており、パナソニックはCO2冷媒を使った業務用の冷凍冷蔵機器を戦略商品と位置づけ普及に力を入れています。海外では米デュポ
ン等に新しい冷媒開発の動きが進んでいます。
今後、より温暖化の影響が小さいCO2やアンモニアといった自然冷媒の導入や新しい「ノンフロン冷媒」の開発・普及が課題となります。

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図2 ノンフロン製品表示マーク

環境省も、ノンフロン製品の普及に努めており、対応した製品には図2のような表示をするようになっています。我々も地球環境を守るため代替フロンの今後の動向についてはしっかり見届けると共に、製品購入
に関してもノンフロン製品の購入を心がける事が重要となります。勿論省エネ製品であることは言うまでもありません。
以   上
*参考文献  毎日新聞・朝日新聞掲載記事
環境省・経済産業省HP「フロン排出抑制法の概要」
一般社団法人 日本電子回路工業会 HP
(2016.7.31記)

 

2016/3/31
電力自由化と自治体電力

一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

電力自由化については「動き出した電力自由化の展望と今後の課題(2015.11.31掲載)」にて少し述べたが、今回はいよいよスタートした電力自由化と生駒市も検討している自治体電力について述べてみる。

電力自由化に伴い、大手10社で独占してきた50kW以下の一般家庭や商店等は約8,500件、市場としての大きさは年間8兆円程度あり、約7兆円の携帯電話の通信事業の市場を上回る。参入する事業者はこれからも増える見通しである。

その中で、地元の太陽光発電等の電気を調達し、大手電力より割安な価格で売る。電気の地産地消による地域経済の活性化を狙う自治体としての動きがある。

 (1)家庭向け電気販売事業に参入する会社
国の登録を受けた新規の事業者は200社以上となり、約23万世帯が契約変更を申し込んだ状況。
新規参入の会社の特徴は、下記の3つに分かれている。

1)既に自前の発電所を持っていて、電気を安くつくれる都市ガスや石油元売り等のエネルギー関連会社。ガス会社は海外からLNGを大量に輸入しており、火力発電所をつくり、全面自由化の前に既に工場やオフィスビルに電気を売るビジネスを手掛けてきた。又、石油会社はエコカーの普及などで主力のガソリン  販売は先細りのため電気を次の成長に繋げようとしている。
特に、ガス会社はガス機器の点検や修理にて各家庭を訪問する機会が多く、セット契約での割引をセールストークに大手電力からの切り替えを勧める。

2)電気とあまり関係なさそうだが、一般顧客と密接につながりがある会社。携帯電話会社は自社ショップでセット契約による割引・コンビニ会社は料金単価を最大9%割引、電気料金1,000円について10ポイント付加。共にテレビCMにてしっかりPRしている。
自前の発電所は持っていないが、大手電力や発電設備を持つ会社と契約し、電気を安定して調達する仕組みを整え、これまで手掛けてきたサービスに電気も加え顧客を囲い込む狙いがある。

3)今後注目を集めそうなのが、太陽光等の再生可能エネルギーや電気の地産地消にこだわる会社(自治体)。
「みやまスマートエネルギー」は福岡県みやま市が55%を出資し、九州電力の現在の料金より平均2%安いプランを打ち出し、3年後に市内全世帯の70%にあたる約1万世帯への販売をめざす。電気は、主に市内の太陽光発電所から買い、夜間の不足分は卸電力市場から調達する。又、契約者にはタブレット端末を配り、電気の使用状況をもとに高齢者の見守りサービスや、ネットで地元の商店や農家から野菜等も買えるような仕組みを進めている。

◆家庭向け電気販売に参入する会社

主な会社 主な特徴
発電所運営、自社営業網で電気も売る 大阪ガス、東京ガス、
昭和シェル石油、
JXエネルギー等
・都市ガスとセット契約での割引
・ガソリンとのセットでの割引
電気を仕入れ、自社商品とセットで売る ローソン、ソフトバンク
KDDI、JCOM等
・料金割引ポイント付加
・携帯電話とのセットでの割引
契約者を限定し電気を売る みやまスマートエネルギー
大阪いずみ市民生協等
・みやま市民対象、九電△2%
・組合員対象、関電最大△12%

(2)電力会社設立に取り組んでいる主な自治体

 
  社   名 設立時期 出資割合(%)
山形県 やまがた新電力 2015年  9月 33.4
群馬県中之条町 中之条電力 2013年  8月 60
浜松市 浜松新電力 2015年10月 8.3
滋賀県湖南市 未定 2016年  5月 33.4
大阪府泉佐野市 泉佐野電力 2015年  1月 66.7
鳥取市 とっとり市民電力 2015年  8月 10
北九州市 北九州パワー 2015年12月 24.17

上記以外にも、多くの自治体が設立を決定し生駒市も検討を進めている。

(3)自治体が参画する意義
「みやまスマートエネルギー」等、多くの自治体が既にスタートしているが、今後都市部以上に高齢化が早期に進む地方自治体にとって電力自由化を機会に街づくりを考える事は大変意義がある。
1)地産地消による地方創性の核とする
・地域でお金が回る仕組みづくり。
・電気を一つの軸としていろいろな市民サービスの提供
・高齢化社会に向けての見守り、健康管理チェック(タブレット端末活用展開)
2)再生可能エネルギーを中心としたクリーンエネルギーの創出&供給。
HEMS活用による省エネ促進にてCO排出量を抑える。

 (4)今後の課題
1) 電力自由化に伴う電気料金の仕組みが安さを目指すゆえであるが、新規参入組のプランは電気を使えば使うほど「お得感」が高まるしくみになっている事である。これまで、大手電力の料金体系は電気を使う量が多いほど単価が上がり、東京電力の場合1.5倍の開きがある。これまで独占であったため取れる料金体系ではあるが、節約せざるを得ない低所得者・節電や節約に努める世帯は採算が厳しいが契約者全体で利益を創出してきたというのが実情である。
新規参入事業者は、大手が利益の源泉としてきた部分を安くし使用量の多い顧客獲得を目指し、使用量の少ない顧客にはあまりメリットがない料金体系としている。その結果これまで創エネとの両輪として力を入れてきた省エネ・使用量ダウンにて節電を促すという理念が薄らいでいくのが大きな課題である。

◆電気消費量別電気料金

 
1kWh~120 121kWh~ 301kWh~
東京電力(現行料金) 19.43円 25.91円 29.93円
JXエネルギー 20.76
(+7%)
23.26
(-10%)
25.75
(-14%)
東急パワーサプライ 19.41
(-0.1%)
25.88
(-0.1%)
28.43
(-5%)

又、驚きは新電力5位の「日本ロジテック協同組合」が4月以降の登録申請を取り下げた事である。
これまで電力供給契約は全国で自治体や学校など約7千件もの実績があったにもかかわらず・・・。
電力自由化に伴う市場は大きなものがあるが、大手電力も指をくわえて自らの顧客が浸食されていくのを静観するはずはなくしっかりした経営計画に基づき確実に進めていく事が重要である。

2)生駒市も検討している、自治体電力としての今後の課題は、次の3点が上げられる。

①価格だけの勝負では、どうしても規模の大きいところが有利であり、自治体電力としては再生可能エネルギーを出来る限り調達し地産地消をしっかり訴え、地域に根付いたサービス事業を付加し市民に信頼される事業として育てていく。
②まずは、全ての公共施設に範を示し導入すると共に、供給電源を確保しミニマムの採算ベースを構築した後少しづつ企業・家庭へと規模を増やしていく。
③多くの自治体電力が電源とする太陽光発電は、再生可能エネルギーの買い取り制度の見直しにより今後は交付金の減額が見込まれる。又、50kW以下の場合、問題にはならないと思うが、メガソーラー等の場合今後の動向によっては減額の可能性がある事も視野に入れる必要あり。

(5)市民としてのかかわり
小生が携わっている(一社)市民エネルギー生駒は「市民共同発電所に求められるもの(2015.7.31掲載)」において明言した通り、生駒市及び多くの市民のご支援により2015年3月に2号機・3号機を完成するに至る。
3基合わせても150kW程度であるが、地産地消を目指し他のサービス事業を加え今後の高齢化社会における行政の姿を模索する生駒市に少しでも協力する事が出来ればと考えている。
3-11

以   上
*参考文献  朝日新聞掲載記事
(2016.3.31記)

2016/1/31
動き出した電力自由化の展望と今後の課題

一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

昨年、12月12日パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)にて2020年以降、新たな温暖化対策の世界的枠組みを決める「パリ協定」が全会一致で採択された事は環境に携わっている者だけでなく、地球に存在する生きとし生きる者にとって大変重要なすばらしい出来事といえます。複雑に絡む利害を反映し、各国が折り合いをつけた結果だけに課題は多少残るものの、開始前の状況から考えるとよくここまで合意したと言えます。

新しい枠組みは18年前の京都議定書(COP3)以来であり、全196カ国・地域が温室効果ガスの削減に参加し、石炭や石油等の化石燃料に依存しない社会を目指す同じステージに立つという事です。

今回は、①なぜ、この温暖化対策に全世界が取り組まなければならないのか? ②これまでの温暖化対策をめぐる動き ③今回のCOP21に期待されたもの ④今回のCOP21にて合意した事 ⑤今後我々が成すべき事  について述べてみたい思います。

(1)なぜ、この温暖化対策に全世界が取り組まなければならないのか?
1990年以降、世界の温室効果ガスの排出量は3割以上増え、大気中のCOの濃度は400PPMを超えた。海面水位は1992年以降約8センチ上昇し、ツバルのような国は今まさに存続の危機となっている。

又、温暖化により世界各地にて、記録的な熱波や大雨、干ばつ、強烈な嵐など気象異変が相次ぎ、多くの人々が気候変動への懸念を強め、人類の危機としてもう待ったなしの状況に陥ったことにあります。

 

(2)これまでの温暖化対策をめぐる動き
◆1992年
国際社会が地球温暖化への危機を共有したのは「国連気候変動枠組み条約」が採択。
国連気候変動枠組み条約1994年発効
◆1997年

この条約のもとで京都議定書を定めCO等の温室効果ガスの削減を初めて義務づけた。 ただ、議定書で削減義務を負ったのはCOを排出し先に発展し、より重い責任があるとの考え方より、先進国のみとなる。京都議定書2005年発効。

<結   果>
国別の削減目標は、国際交渉で決め、先進国全体では「1990年と比べ少なくとも5%減」を目指した。これに、米国は「経済に悪影響がある」として離脱。それでも、最初の取り組み期間(2008~2012年)の5年間で37カ国・地域が参加し削減率の低下は22.6%と目標を大幅に上回る。

ところが、世界のCO排出量は逆に5割も増えた。削減義務の無い中国やインドなどの新興国が大きく経済成長し排出を増やしたためであり、このままでは、産業革命にて化石燃料を燃やし始めた19世紀末に比較し、今世紀末には気温が4度程度上昇し深刻な影響が出るという危機感に迫られる。

 

(3)今回のCOP21に期待されたもの
京都議定書は各国の利害と南北の対立により期待通りの成果が示せなかった。COP21で合意を目指す新たな枠組みが出来るのか、又合意できても技術的に深刻な影響を回避する事が可能なのか課題はある。
ただ、技術の進歩は著しく京都議定書が採択された1997年、800万kW以下だった世界の風力発電は2014年3億7千万kWになり原発と肩を並べた。ほぼゼロだった太陽光発電も1億8千kWになった。  自然エネルギー(再生可能エネルギー等)は世界で新たにつくられる電源の6割以上になっている。
又、エコカー技術を競い合うハイブリッド車は世界累計800万台を超え、冷蔵庫の消費電力は10年前に比べ68%、LEDランプは以前の電球に比べ80%も減少している。

多くの課題を抱えながらも、途上国を含めたすべての国が参加する実効的な枠組みをめざしパリ合意を目指す。特に、排出量の多い大国である米国、中国が本気で取り組み向き合う事がCOP21成否を握るカギとなる。

 

(4)今回のCOP21にて合意した事
■COP21の骨子

項   目 主  な  内  容
世界全体の目標 ・気温上昇を2度よりかなり低く抑える。1.5度未満に向けて努力
・今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収を均衡させる
各国の削減目標 ・作成・報告、達成の国内対策を義務化
5年毎に更新、後退させない
途上国への支援 ・先進国に拠出を義務化
・途上国に自主的な排出を奨励
温暖化の影響への対策 ・被害の軽減策を削減策と並ぶ柱に
・途上国で起きつつある被害の救済策取り組む

全ての国が参加できるよう目指した温室効果ガスの削減目標の達成は義務化出来ず、京都議定書に比べれば厳格さに欠ける。しかし、達成のための国内対策の実施は義務化され途上国も含め、世界全体で排出量を減らす仕組みが設けられた。

1点目は、温暖化対策の長期目標。「気温上昇を2度以内に抑える」ために「今世紀後半に人為的な排出と吸収を均衡させる」と明確にしたが、「実質排出ゼロ」を目指すという事。さらに温暖化の影響を受けやすい島国等が求めていた「1.5度」も努力目標として入った。このためには、実質排出ゼロを前倒しで実現する必要があり、石炭・石油等排出の多い化石燃料に頼る時代の終焉を意味する。

2点目は、長期目標の達成に向けた定期的な点検と見直しの仕組みである。各国が提出した目標を足し合わせた効果を5年毎に世界全体で点検し、その結果を受けて自国の目標を更新する機会を与え、対策を徐々に強化する。

各国は2025年又は2030年に向けた目標を掲げているがこれは通過点に過ぎない。日本の「2030年度までに2013年度比26%減」の目標も5年毎に見直す事になる。各国は実質排出ゼロに向けた長期戦略づくりが急がれる。又、今年になり2050年度までに80%削減、CO排出権取引の活性化等の追加発表等が成されている。
パリ協定では、「持続可能なライフスタイルや消費・生産の重要性」も強調した。

図1. 世界のCO2排出量 317億トン(2012年) 

1-1

図2. 1人あたりのCO2排出量 世界平均4.51トン (2012年)

1-2

 (5)今後我々が成すべき事
COの排出量を抑えるために今後我々が成すべき事は、化石燃料から脱却し再生可能エネルギーに大きくかじ取りをする事が重要です。それと同時に、車の両輪のように、政府・企業・家庭・自治体、さらには社会も、従来のエネルギー多消費型から省エネルギーを考えたものに変わる事が重要となります。前回の電力自由化で述べたように、個を超えた協同での省エネ化、個人、家庭、企業がつながるスマートコミュニテーシテイーをめざす事が必要であり、それにより無理なくより効率的に省エネを進めていく事が可能となってきます。今後我々は、世界共通の課題として危機感を共有し、COP21にて決められた骨子に基づき今後明確になる数値目標達成に向け全力で取り組まなければなりません。

以   上
*参考文献  朝日新聞掲載記事
(2016.1.31記)

 

2015/12/22
動き出した電力自由化の展望と今後の課題

一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

いよいよ来年より電力の全面自由化がスタートします。
電力自由化は、1995年より開始されているものの、これまでは50kW以上の高圧に限られており思ったほど大きな動きには至らず、又大きな市場にも繋がらず、一般市民にも関心が薄かったのが現状です。
ところが、2016年4月からは電力自由化の最終段階とも言う小売の全面自由化が開始される事となり、家庭向けも従来の電力会社以外の小売業者と契約する事が可能となるのです。
まさに今動き出した電力自由化、講習会を企画しても電力自由化を学ぶセミナーは満席の状況です。その事より、今回は電力自由化について述べてみたいと思います。

(1)電力自由化とは
  2014年6月に電力の自由化法案が成立し、2016年4月より、電力の全面自由化がスタートする事になります。ただ、一般市民は「電力自由化=電気代が下がる」と考えていますが、それは結果としてそうなる事も可能であるという事で、電力自由化とは「多くの選択肢を得る事」といえます。
①どの電力会社を選択するか、又②自らが供給側に立ち発電所を持つか、更に③もう一段上を目指し電力会社になるか、④どのように電力を使い、⑤どういう設備を導入するか等、自らの責任において選択出来る時代に入ったという事です。
ただ、一般市民として前述の①の視点にて考えてみると、電力料金を最大限安くしたいニーズ(経済性)、原発絶対反対あくまでも再生可能エネルギー等地球環境にやさしい電力を使用したいニーズ(環境性)、地産地消・自産自消等社会に貢献したいニーズ(社会性)等があります。つまり、見えないため均質・均一のものと思われていた電気に新たな付加価値をつけストーリーのある電力を選択できるという事です。
ただ、電力自由化を成功させるためには、その根幹ともいえる電力システム改革をきっちり実施していく事が最も重要になってきます。

図1 電力システム改革のポイント
kgf1

kgf3

(2)電力自由化の意義
  自由化になれば、現在の総括原価方式はなくなり、本来の意味での競争原理が進むという事です。
総括原価方式をもう少し補足すると、日本を10地域に分割、それぞれ単一の電力会社が独占的に供給するため市場競争が無く、国が電力会社からの申請を受けて認可。算出方法は、発電・送電・メンテナンスの原価総額+一定利益により決定。長年実施されていたこの方法により、電力会社は倒産の不安はなく、低金利にて資金調達可のため、原発等への積極投資可能。役員報酬・社員賃金、原発を推進するための広報費、立地地域へのバラマキも原価に含まれ、コスト削減への努力はどうしてもおろそかとなり、その結果世界でもTOPクラスの割高な電気代となっています。
ところが電力自由化により、デマンドサイドに電源が設置され余剰が出てくると売買が出来、しかも省エネに取り組めば取り組むほどその分多く売れる事になり、キャッシュの流れが一方通行だけでなく相互に循環する事になる意義は大きいものがあります。

(3)期待される電力自由化の展望
  大きな市場が動き出します。電力自由化に伴い、電力販売のニーズはエネルギー事業者各社はもとより、情報通信系の企業、ゼネコン、商社等が多く参画する事が想定されます。本丸の電力事業者も、既存の市場を侵食されれば、他の分野、何らかの方法で失った分を取り戻そうとするでしょう。
2015年度に広域系統運用推進機構が設置される予定ですが、その土壌に各種の再生可能エネルギーや余剰電力、さらにはデイトレーダー等が参入する事でリアルタイム市場が醸成され、エネルギーとインターネットが融合した「総合エネルギー産業」の一つのモデルが成立し、そのデジタルデマンド革命により、電気メーターにICTが付加された「スマートメーター」も開発され、そのスマートメーターが各家庭の電力価格の調整を行う光景も一般化し大きな市場に広がっていく事が予想されます。

図2 想定される電力市場
kgf2
(経済産業省電力調査統計等をもとに㈱エナリス作成)

(4)生駒市として目指す姿
  総務省は、2014年に「地域の元気創造本部」を設置、分散型エネルギーインフラのプロジェクトを立ち上げました。これは、市町村がそれぞれ分散型電源を取り入れ、自然災害の緊急時においても自治体機能の維持を図る取り組みを促進するもので、太陽光パネルの設置を促進、蓄電システムを導入しプラットフォームの形成を図る自治体を公募し2014年に13の自治体が選出され、その中に生駒市は含まれています。
この取り組みはドイツの地域公共インフラ管理自治体「シュタットベルケ」を一つのモデルとしています。シュタットベルケとは、電力・熱・ガスなどのエネルギーを主体に地域によっては上下水道やバスなど公共交通を対象として市町村が出資し、これら公共インフラの管理と供給等を一体的に行う事業体の事です。法人の形態をとり、経営は民間事業者が行う事でコスト削減を図り、市民に対しては地元のシュタットベルケとの電気の売買によりインセンティブを持たせる事などが考えられます。
今後、規制改革による電力自由化は、超高齢化に悩む地方自治体の活性化、民間活力を有効活用しながらローカルなエネルギーを地産地消する一つの取組として多くの自治体にて検討中であり、生駒市もその一つです。

(5)当面の課題
  来年4月よりスタートするとはいえ、大きな改革であるがゆえに、本当に大丈夫?という不安もあり、本来の電力自由化に突き進むには前述の図1電力システム改革のポイント でも述べましたが、まとめてみると次のような課題があげられます。
これらを確実に実施できてこその電力自由化であり、しっかり見届ける必要があります。

1)発送電分離の徹底
・旧電力の持つ送電網を借用しての事業となる新電力が、旧電力との対等なる競合

2)託送料金の適正化
・新電力の新規参入を受け入れやすい適正価格設定

3)旧電力が実施している「30分計画値同時同量」への対応
・旧電力会社と調整した「インバランス料金」での精算

4)再生可能エネルギー電力の優遇措置
・価格ありきの観点より、石炭火力、原子力等の方向に向かう懸念あり

(6)中長期の課題
   さらに、中長期の視点からすると次のような課題も懸念されるところです。
1)周波数の統一
2)低コストで安全な蓄電システムの開発
3)送電網の充実
4)直流発電、直流送電

◆まさに、2016年4月は電力全面自由化スタートの時であり、大きなビジネスチャンスが広がると共に、多くのビジネスモデルが生まれてきます。ただ、やはり基本は省エネルギーであり自然エネルギーの熱利用の促進にある事を忘れてはなりません。
以   上

*参考文献
スマートコミュニティーvol4    (監修 柏木孝夫教授)
株式会社 エナリス      (福岡正彦氏 資料)
大阪経済大学教授              (遠州尋美氏 資料)
(2015.11.30記)

 

2015/09/30
小水力発電所の展望と課題

小水力発電所の展望と課題
一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

前回、2011年の東日本大震災での福島第一原発の大変な事故以降、原子力発電のあり方が問題となり、再生可能エネルギーの拡大が重要になってきている事を述べましたが、2012年より開始された固定価格買取制度によって、再生可能エネルギーに対する取組みが大きく伸びる要因になった事は紛れもない事実です。
その中で、今回は小水力発電所について述べてみたいと思います。
水力発電は水の自然循環を利用しているため燃料が不要で、優れた再生可能エネルギーであるが、今では再生可能エネルギーと言うと太陽光発電を真っ先に思い浮かべる方が多いと思います。                  又、水力発電は、大規模なダムによるダム式発電をイメージしますが、日本初の水力発電所は、1892年に京都市が琵琶湖疏水として建設した蹴上発電所で、京都市内の電灯や市電の動力に使われ初期は百数十kWで運用を開始し現在でも関西電力蹴上発電所(1936年、4,500kW)として稼働しているとの事です。
我々市民が参画できるのもこのような小水力発電に限定されてきます。
そこで、小水力発電のメリットとは何か、地域住民力を結集しての展望も視野に入れ、今後どのような課題があるのか考えてみたいと思います。

(1)小水力発電の範囲
どの範囲を小水力と呼ぶのかについては、いろいろな区分があり厳密な線引きがあるわけではない様ですが、以下に、NEDOと固定価格買取制度の分類を示します。
◆NEDO(産業技術総合開発機構)作成「マイクロ水力発電導入ガイドブック」
・100kW未満「マイクロ水力」
・100~1,000kW「ミニ水力」
・1,000~1万kW「小水力」
・1万~10万kW「中水力」
・10万kW以上 「大水力」
◆固定価格買取制度⇒買収対象3万kW未満(中小水力)
・200kW未満⇒34円/kWh
・200~1,000kW⇒29円/kWh
・1,000~3,0000kW⇒24円/kWh
上記より、一般に小水力発電とは1,000~1万kWを示すという事が理解できますが、市民力による設置を考えると、水路式を利用、マイクロ・ミニ水力を含め3,000kW以下というのが妥当です。

(2)小水力発電のメリット
1)水の自然循環利用のため、CO2、廃棄物を出さないクリーンな再生可能エネルギー
2)燃料不要、輸入燃料に依存しない「純国産エネルギー」
3)水力発電のように大規模なダムを必要とせず、初期投資も少なく発電機のメンテナンス実施により長期に発電可能。また燃料費が不要で運営コストが低いため、発電コストが低く回収期間が短い。
4)太陽光、風力とは異なり、季節、時間帯に影響を受けず安定した発電可能
(3)小水力発電の展望
日本における水力発電はこれまでダム式発電所タイプが多く、そのほとんどが既開発設置済みである。しかし、既開発設置済み出力の6割に相当する未開発の水力発電所を規模別にみると以下の通りで、小水力発電の開発余地が大きい事がわかります。

(資源エネルギー庁「発電水力調査」2009)

小水力発電に取り組んでいる地域では、地域住民が積極的に参加し地域の活性化につながっているケースが多く、条件が不利とされてきた中山間地域が、小水力発電に適した地域となります。
奈良県でも、今年スタートし規模は小さくマイクロ水力のジャンルに入りますが、東吉野村つくばね小水力発電所(出力82kW)等は村の活性化を目的としたものといえます。
小水力発電は24時間発電が可能であり、蓄電池や電気自動車を組み合わせることによって可能性はさらに広がります。又、大規模ダム建設に比較し環境に配慮すると共に、固定価格買い取り制度によりイニシャルコストを回収しやすくなり長期にわたり利益が得られる可能性があります。
全国各地にて、多くのポテンシャルを秘めた小水力発電所の設置を地域住民が主導権を握り、企業、地方自治体、国と一体となり推進し、エネルギーの地産地消、地域の安全なエネルギー創出につなげ、地域に収益が還元するような取り組みが重要であると考えます。
来年から始まる電力自由化に対応すべくスマートコミュニティーシティー考想を進め、地域に根づいた地域電力会社の設立につなげていく事も、今後高齢化社会が進んでいく中において地域住民として成すべき事の一つかもしれません。

(4)発電所設置にむけての課題
1)水利権に伴う許可の簡素化及び規制緩和
・河川法に基づき水利権者(行政機関等)の許可を取る必要あるも手続き複雑
2)電気事業法、森林法、自然公園法に対する負担軽減のための制度改革
・20kW以上では、電気事業法による規制を受ける⇒電気事業主任技術者の選任等
3)発送電分離を含めた電力改革
・送電網の電力会社独占所有
◆ここ数年、かなり進展はしているもののさらなる小水力発電の飛躍を目指すためには、課題解決に向けた取り組みが熱望されている。

以   上
*参考文献
農林中金総合研究所(清水徹朗レポート)
水力発電がわかる本(全国小水力利用推進協議会編)

 

2015/07/31市民共同発電所に求められるもの

市民共同発電所に求められるもの
一般社団法人 環境技術普及機構
顧 問  楠 正志

地球温暖化が今大きな問題となっていますが、20~30年ほど前は、皮膚がんや白内障に重大な影響を与える有害紫外線を増加させ、CO2の数千倍も地球に熱をため込んでしまうオゾン層破壊の元凶であるフロンガス(CFC,HCFC等)が大問題となっていました。この問題は、既に設置されている機器からのフロンガス回収の課題は残るものの、全廃の規制により鎮静化に向かいつつあります。

地球温暖化は、過去100年では約0.5℃の上昇が、これからの100年では約6.4℃上昇するとの見方がなされており地球環境にとって引き続き地球温暖化は大変深刻な問題と言えます。人類が豊かな生活を望めば望むほど、先進国から発展途上国へと必要エネルギーは際限なく増える事が予想されます。今、発展途上国に地球環境を守るためエネルギー使用を抑制する事、先進国にエネルギー使用を限りなくゼロに抑える事は難しい問題であり、毎回COP(気候変動枠組条約締約国会議)では、議論を尽くすも結局各国の利害が優先されなかなかまとまらないのが現状です。

エネルギーを抑えるには、省エネを推進する事が必要とされますが、ただガマンガマンだけでは持続性はありません。勿論多少のガマンは必要としても、賢い使い方や省エネ機器の開発等により使用量を出来る限り抑える事が重要です。
次に、エネルギーを何で創りだすかがポイントとなってきます。
経済産業省は先日2030年度の電源構成(エネルギーミックス)を正式に決め総発電量に占める原発の割合を約2割とする事を決定しました。かつて、地球温暖化に対し最もCO2削減に効果があるとされる原子力発電へ舵を切った時期がありましたが、東日本大震災により安全神話が崩れ、原発の課題が浮き彫りとされたのは4年前の事です。その課題が十分解決されない中での再稼働、パブリックコメントにも約2割とする事に多くの異論があり、本当にこれで良いのかと大いに疑問を感じます。
ただ、原発反対を叫ぶだけであれば、外野席からヤジル人と同じであり、まず市民として成すべき事は、環境
問題に関心を持ち行動を起こす事が重要です。

市民共同発電所に求められるものは、企業等が設置しているメガソーラーではなく、市民一人一人が具体的に参加できる機会を提供する事です。自宅に太陽光発電を設置すれば少なくとも数百万円かかり、建築後30~40年経過した住居には建物そのものを改装する必要があり多額の費用がかかり、なかなか決断には至らないケースが多々あります。
聖武天皇が多くの民の協力により大仏様を建立した時と同じように、市民ファンドで多くの市民の力により造られた発電所こそ親しみのある市民共同発電所であり、クリーンな再生可能エネルギーを生み出す創エネ活動に市民として参加できる第一歩となります。

市民共同発電所は創エネ事業としての一つの実例ですが、高齢化社会が着実に進みつつある今、定年後の元気な市民が積極的に参加する事が重要です。ボランテイアで明るく元気に現役時代に培ったノウハウ、スキルをフルに活用し、これからは世のため、地域のため、人のために精一杯貢献する事が我々の成すべき道と考えます。(ただ、勘違いしてはならないのはそこに現役時代の肩書、学歴は不要である事、つまり現役時代に身に着けていた鎧兜は全く無用という事である。)

以下に、市民共同発電所の具体的実例として、設立に代表理事として係った一般社団法人市民エネルギー生駒についてこれまでの取り組み、概要、今後の取り組みについて示します。
ここで、重要な事は市民が主体となり市民力を結集し設置した市民共同発電所であるが、生駒市が公共施設屋根の20年間借用を承認、環境モデル都市の創造を官民一体となって進めていることにあります。
緊急災害時には非常用電源として供給すると共に、償還期間が完了する2034年には、生駒市に無償譲渡する予定です。

1.生駒市の環境への取り組み
生駒市では、低炭素社会の実現を目指し再生可能エネルギーの普及拡大につながる太陽光発電設備設置に対し各種助成、普及促進政策を実施している。平成26年度には生駒市エネルギービジョンが制定され、又同年3月には環境モデル都市の制定を受けこのアクションプランの中でも、太陽光発電の加速度的普及が計画されている。

2.市民による環境への取り組み
生駒市と協同で環境問題に取り組む生駒市環境基本計画推進会議(愛称:ECO-net生駒)の有志が太陽光の普及拡大のため、一般社団法人「市民エネルギー生駒」を平成25年10月に設立した。
当法人では生駒市の公共施設「エコパーク21」の建屋の屋根を20年間生駒市より借用し太陽光発電設備を設置し平成26年3月に完成、平成26年度実績:計画比116%とし順調に稼働中
必要資金1,700万円は市民ファンド(1口10万円)で出資者を募集し全額市民出資(内生駒市民約80%)にて資金調達した。

3.設備の概況
■設備規模 53.235kW    低圧連携
■発電量  初年度計画 53,330kWh (初年度実績 61,749kWh:116%)
■投資額  1,700万円  全額市民ファンド(内生駒市民約80%) 配当1.5%
■売電価格 36円/kWh(税抜き) 20年間固定

4.今後の展開
引き続き生駒市の施設の屋根、遊休土地を借用し生駒市の政策に沿った形で太陽光発電所の設置計画を推進する方針。今年度中に2・3号機として2件実施予定。(11月より出資説明会開催予定)

5.子どもたちにクリーンエネルギーで明るい未来をそして関西一住みやすい環境都市生駒の創造!

以上
(2015.7.31記)

 

2014/10/01
環境技術普及機構 第四期事業報告書作成

第四期事業報告書を作成いたしました。
詳細につきましては下記よりPDFファイルでダウンロードできます。
↓↓↓

 

2014/05/02
新商品について

この度、ウィレスセブンという新商品を出します。
次亜塩素酸ナトリウムを使った衛生商品です。
ウィルスを殺菌して、みなさんの健康を守ります。

 

2014/06/13
エネルギー政策の大転換

・・・エネルギー政策の大転換・・・

インタビュー …… レスター・ブラウン氏に聞く
加速するエネルギー大転換、取り残される日本
聞き手:枝廣淳子
Lester R.Brown
1943年、米ニュージャージー州生まれ。1974年ワールドウォッチ研究所を創設。また2001年5月、環境政策のビジョンを提示する新しい研究機関としてアースポリシー研究所を設立、所長に就任。『エコ・エコノミー』『地球に残された時間―― 80億人を希望に導く最終処方箋』など著書多数。
えだひろ・じゅんこ
環境ジャーナリスト、翻訳家。
世界 SEKAI 2014.6

雑誌・世界(岩波書店)6月号より

全体像を見る力 ――― 環境問題事始め

フィードバック・ループが回り始めた

――― 人によっては、気候変動などが悪化する状況に悲観になっている人もいますが、レスターさんはどうでしょう?
残り時間は少ないので、急いで行動する必要があります。良い知らせは、「私たちは急いで行動することができるし、そうするだろう」ということです。
風力発電の急拡大を見てください。中国では風力発電のメガコンプレックスを6つも作っています。1つあたりの発電容量は、最低でも2万メガワットです。最大のものは、モンゴルに最先端の技術を用いて作られるもので、完成すれば1つの風力コンプレックスで3万8000メガワットの発電容量を持つようになります。ポーランドのような国なら、一国分の電力需要をこれだけでまかなえるほどの規模です。
これまで、エネルギーの分野でこれほどの急拡大は見たことがありません。原子力発電所なら1つの規模は1000メガワットくらいでしょう。2000メガワットもあれば、巨大な原子力発電所になるでしょう。しかしここで話している風力発電は2万メガワット、3万8000メガワットなのです。まったく新しい状況です。米国では、この5年間で石炭火力発電所の15%が閉鎖されました。これほど早く石炭火力発電所が閉鎖されていくとは、だれも考えていなかったでしょう。
そして、その理由は、経済性です。特に、立地地域が発電所から排出物に関する規制をきちんと施行させようとすると、石炭火力発電所は経済的に成り立たなくなります。石炭火力発電の時代はもう終わっています。

シェールガスは答えではない

――― 「シェールガスが答えだ。少なくとも時間を稼ぐことができるから、進めるべきだ」と考えている人々もたくさんいますが……。
いいえ、それは間違っています。投資をするなら、シェールガスではなく、再生可能エネルギーにすべきです。テキサスでは、すさまじい勢いで風力発電への投資が増えていますよ。その大きな理油は、テキサスからカリフォルニアに送電網が引かれるからです。風力発電エネルギーに対する大きな市場とつながることになりますから、テキサスは大喜びです。
それにね、油田やガス田に投資をしたら、いずれ石油やガスは枯渇して、別の油田やガス田を探さなくてはなりませんが、風力発電に投資をしたら、資源が枯渇することは永久にありません。これが、風力発電への投資の素晴らしい点です。わくわくするでしょう? 必要なエネルギーを風力から得られるようになるまで、積み上げて増やしていくことができるのですから。場所によっては、太陽光発電が適しているでしょう。太陽光と風力の何らかの組み合わせ―――これこそが将来の姿なのです。
こういった変化が早く進むところもあれば、そうでないところもあるでしょう。たとえば、ロシアです。ロシアは、化石エネルギーという枠にあまりにも強く縛り付けられています。化石燃料に頼って経済を回し、輸出も化石燃料に頼っていますから、風力発電のことはあまり考えていません。しかし遅かれ早かれ、自分たちの強力な競争相手は太陽光発電や風力発電なのだと気づくでしょう。

日本はなぜ取り残されるのか
――― 現在の日本をどのようにごらんになっていますか?
こんにちの日本の考え方はトラディショナル(従来型)だと思います。人口の高齢化につれて現れる特徴なのかもしれません。日本はこれまで、長年にわたって、技術の最先端に位置していました。太陽光発電も最初は日本が先駆けていましたよね。しかし、日本はもはやこの分野のリーダーではありません。
日本では、化石燃料業界のロビー活動がとても強いことも知っています。電力会社に大きな影響力を与えているのは、石炭・石油・天然ガスの業界であり、太陽光発電や風力発電の業界ではありません。しかし、日本でも、太陽光発電が増えて、電力会社の市場が小さくなっていけば―――おそらくそうなるだろうと思っていますが―――、業界にとっての警鐘となるでしょう。

―――世界で現在進行中の「エネルギー大転換」に日本は取り残されているのですね。
ええ、そうですね。少なくとも、もはやこの分野のリーダーではありません。そして、日本の考え方は、年配のほとんど男性のCEOたちのものであって、その考え方は過去のやり方に支配されています。未来型の考え方ではないのです。ある意味、これは高齢化する人口の特徴でもあります。
高齢化する人口は、若い人たちがより発言権を持っている国に比べると、社会的な柔軟性を欠きます。米国と日本を比べてもわかるでしょう。米国では、主要なイノベーションを生み出しているのは、10代の若者です。マイクロソフトのビル・ゲイツも、フェイスブックの創業者もそうです。17歳のハーバード大学の中退者たちが、新しい時代を創り出してきたのです。こういったイノベーションは、昔からある電力会社から出てきたわけではないのです。
米国の社会としての強みの一つは、社会のオープンさです。日本にはそういう可能性があまりないように思えますが、この国では若者が影響力を持ち、新しいものを創り出していくことができるのです。
別の例を話しましょうか。ウォーレン・バフェット氏です。彼はつい最近、ジーメンスから10億ドル相当の風力発電機を購入しました。アイオワ州に設置するためです。彼は、太陽光発電にも67億ドルもの投資をしています。「これこそが将来だ」と彼は考えているのです。
興味深いと思いませんか?成功している投資家というのは、将来を見るのがうまい人たちです。そして、ウォーレン・バフェトといえば、成功している投資家のトップでしょう?その彼が、将来はこれまでの石炭・石油・天然ガスではなく、風力や太陽光にあると見立てているのです。

――― 日本では、資源が乏しいからやはり原子力発電が必要だと考える人たちもいます。原子力発電についてはどう考えていますか?
米国でも大手の電力会社の一つは、11の原子力発電所を持っています。そして、この1年間で、そのすべてを閉鎖する予定です。経済的に競争力を失ってしまっているからです。ウランの価格は上昇し、古い原子力発電所を維持するためのコストもかなり上昇しています。修理をしなくてはならないため、稼働を止める時間も長くなります。
原子力発電は、ゼロに向かう途上にあります。米国の原子力発電は、この6年ほどで15%ほど減少しています。世界の原子力発電も、米国と同じく、すでにピークに達して減り始めています。ゼロになるかどうかが問題ではなく、問題は「ゼロになるのにどのくらいの時間がかかるか」だけです。日本では一般的な見方ではないかもしれませんが。

――― 日本でも太陽光発電や風力発電が広がりつつありますが、特に産業界の人たちは「産業用には使えない」といいます。産業用に必要なのは、安定して、安価で、大量に供給できる電力だと。
それは、再生可能エネルギーって呼ばれているものですよ(笑)。永久に枯渇しませんし、今日どれくらいの風を用いて発電したかは、明日どれくらいの発電ができるかにまったく影響を与えません。これが、太陽光や風力エネルギーの素晴らしいところです。

――― 日本では「太陽光や風力は、変動するから使えない」という人も多くいます。
需要側がどうなっているか、知っていますか? 日本でも日々の電力需要がどうなっていくかというデータを見たことがあるでしょう。朝は少しで、少しずつ増えていき、午後から夕方にピークになり、その後、また減っていきます。次の朝になると、また増え始める、といった具合ですよね。需要側ではこのように、大きな変動に毎日毎日対応しているのです。昔からそうですよね。「需要が変動するから問題だ」という人はいないでしょう? このように需要側で問題なく変動に対応できるのであれば、供給側でも問題なくできるはずです。
電力会社も、エネルギー大転換という変化の意味するところが早めにわかれば何とかなるかもしれませんが、「そんなことはできない」と言っているうちに手の打ちようがなくなってしまいます。米国の南西部でも、従来型の見方しかできない電力会社が何社も倒産しています。太陽光発電へのシフトが起こっているのです。電力をめぐる経済性がだんだんと明らかになりますが、電力会社がそれから手を打ったとしても、変化のスピードに付いていけずに手遅れになってしまいます。

――― 変化を加速するために、何が必要なのでしょうか?
教育が必要でしょうね。「太陽光や風力はよいが、まだ末端に位置しているものだ」と思っている人がまだたくさんいます。そういったものの見方を変えていかなくてはなりません。周縁部に位置するものではなく、太陽光や風力こそが将来なのです。そのようなものの見方に変えていくことです。先ほどのウォーレン・バフェット氏の話をしましたが、投資家たちもものの見方を変えつつあります。大きな資金が動き、大きな動きが加速しつつあるのです。

――― ありがとうございました。
(4月11日 ワシントンにて)

 

2012/03/01
原子力発電廃止の方向を打ち出す

(さようなら)
原子力発電の廃止へ
~福島の事故は大きな教訓~

わが国は災害大国
地震、津波、台風、火山、大水害、山崩れに見舞われる災害デパート国家。
専門家の「想定外」は聞きたくない。

核廃棄物の処分場も決まらず、福島の東電第一原発事故の原因調査も中途半端。
事故の場合の避難体制も不十分。
わが国原発の安全性は世界一というが、アメリカ、欧州より何が優れているかが不明。
<<こんな現状下、わが国では原発は不要>>

小水力発電の活用